2023.12.29
コラム
シリーズ連載「知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方」はあなたの心と体に寄り添って、より自分らしく快適に生きるためのコツを専門の医師からアドバイスしていただくシリーズ。伊勢丹新宿店地下2階にある美と健康のショップ「ビューティアポセカリー」でお悩みの多いカテゴリーをピックアップし、自分をもっと好きになるために、今できるケアの情報をお伝えしていきます。
第1回目は「更年期」がテーマ。更年期をいかに過ごすかが、その後の女性の人生を左右します。更年期はさまざまな体と心の変化を感じやすい時期です。「どんな不調が起こるのだろう?」「この不調は更年期障害なの?」と漠然と不安に思う人も多いと思います。更年期を上手に乗り越えて、未来の自分をさらに好きになるためのコツを産婦人科医の対馬ルリ子先生に伺いました。
取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
更年期世代は、プライベートも仕事も自分のやりたいこと、得意なことが見えてきて、チャレンジや活躍ができる時期です。そんなときに、女性を悩ますことのひとつが更年期の症状です。順調だった生理周期が不順になったり、疲れやすい、発汗、ほてり、うつっぽさ、不眠などの体と心の症状に悩まされる人が増えてきます。
「クリニックには、のぼせ、ほてり、発汗などのホットフラッシュと頻尿に困って、何とかしたいと言っていらっしゃる方が多いですね」と対馬ルリ子先生。
参考資料:『「閉経」のホントがわかる本』より
女性ホルモンが減り始めると、反応しない卵巣に脳が混乱して、自律神経や感情が不安定になり、環境やストレスなども重なって、ありとあらゆる不調が生じます。その症状は、一人ひとり異なり多岐にわたります。
「更年期世代は、閉経を挟んで前後5年間のトータル10年間くらいの時期をさしますが、この時期に女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に減少します。エストロゲンは、脳、血管、肝臓、骨、皮膚、粘膜などの全身に作用して、機能を正常に保ち、細胞にハリとうるおいを与えてくれています。エストロゲンは、まさに女性の健康と美の守り神。
このエストロゲンが減少することで、さまざまな不調が訪れます。更年期の不調は、エストロゲンだけが原因ではありません。仕事や家庭などの環境、ご本人の体質や気質なども関係しているのです」(対馬先生)
参考資料:『プレ更年期からの女性ホルモン塾』より
更年期の不調の要因になる要素は、いろいろあります。自分の不調の根本には何があるのかを知るだけでも、ラクになれます。
女性の心と体に大きな影響を与える女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)は、卵巣から分泌されますが、一生のうちにわずかティースプーン1杯ほどしか分泌されません。ごくごく微量で全身のバランスを保っています。この女性にとって大切な女性ホルモンは、50歳を境に低下していきます。
50歳は、日本女性の閉経の平均年齢。その前後10年間の更年期は、自律神経のバランスが崩れ、心身の不調が起こりやすくなります。
女性ホルモンが低下すると自律神経のバランスが崩れるのは、どうしてなのでしょうか?
「閉経が近づき、エストロゲンの分泌が減ると、脳の視床下部は体の機能を保とうとして卵巣に、「もっとホルモンを出して!」と指令を出します。けれども卵巣は寿命が近づいているため頑張ることができず、ホルモンを分泌できません。すると、脳の視床下部は混乱してしまい、自律神経や免疫系の乱れを引き起こし、自律神経失調症と似たような症状が起こるのです。上半身がカーッと暑くなる、ドキドキする、興奮して眠れない、体温調節ができない、めまいがするなどが代表的な症状です。
こうした更年期の不調は、個人差がありますが40代半ばから始まり、50代後半から60代前半で落ち着く人が多いようです。症状がある人は約8割、症状に気づかない人も約2割います。症状のある人の中で仕事に支障が生じるほどつらい人は約3割です。不調のピークは2~3年、長くて5年です」(対馬先生)
参考資料:『「閉経」のホントがわかる本』より
グラフにあるように、女性ホルモンの量の変化によって、起こりやすい病気が異なります。女性ホルモンはゆらぎつつ、全体として右肩下がりに低下していきます。不調の原因がエストロゲンの分泌が減少しているためとわかると自分の体の状態が理解できて安心できます。
また、更年期世代は、これまで起こらなかったような、腟炎、尿もれ、皮膚の乾燥や萎縮のほか、脂質異常症、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、骨粗鬆症、歯周病などが現れやすくなることも知っておくことが大切です。
「更年期障害には多種多様な症状があります。更年期障害だと思っていたら、なかにはほかの病気だったということもあります。たとえば、バセドウ病、橋本病、関節リウマチ、うつ病の可能性もあります。自己判断せずに、医療機関を受診してください」(対馬先生)
婦人科を受診すると、必要な検査を行ってくれます。更年期障害の診断は、ほかの病気でないことを除外診断していくことがとても大切です。
「また、更年期の不調や更年期障害の治療のファーストチョイスであるホルモン補充療法(HRT)を試してみるという方法も診断に役立ちます。2~4週間試しに使ってみて、症状がラクになれば、更年期の不調だったということがわかります。HRTには、飲み薬、塗り薬、貼り薬があり、自分が使いやすいものを選ぶことができます。HRTは、若いときのエストロゲンレベルの3分の1から5分の1くらいエストロゲンを補充する治療法。少しプラスするだけで、脳機能が落ち着いてきたり、皮膚のコラーゲンが増えたりします」(対馬先生)
HRTで期待できる効果には、ほてり、発汗、動悸などの血管運動神経症状の低下、イライラ、うつ、不眠などの精神神経症状の改善、骨密度の維持、認知症リスクの低減、がんリスクの低減などがあると言われています。
「以前は、HRTの継続は5年まで、と言われていましたが、現在はホルモン量を調節し乳がんリスクなどを適切に管理すれば、それ以上の治療も問題ないとされています」(対馬先生)
ほかにも、更年期障害の治療には、漢方薬や抗うつ薬を使った治療もあり組み合わせもできます。どの治療法が自分に適しているか、婦人科医と相談して、自分に合ったものを選んでください。
低用量ピル(OC)と、おもにエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)を比較すると、ホルモン補充療法は1日に補充するエストロゲンの量は低用量ピルの5分の1程度。更年期以前から低用量ピルを使っていた人は、閉経を機に、低用量ピルからホルモン補充療法へ移行するのが基本です。
参考資料:『「閉経」のホントがわかる本』より
女性ホルモンのゆらぎによる不調や女性特有の不調には、ホルモン剤や漢方薬が役に立ちます。婦人科医と相談して、自分に合った治療を選びましょう。
更年期の不調を予防したいと考えている女性たちが増えてきています。更年期につらい不調が出やすい女性のタイプというのは、あるのでしょうか?
「ホルモンの変化に敏感な人は、更年期の急激な女性ホルモンの低下に反応しやすいですね。たとえば、PMS(月経前症候群)がひどくて生理前に体調が落ちる人、妊娠中のつわりがひどい人、産後の体調不良が長く続く人などは、ホルモン変化に敏感な人なので、更年期の不調もつらくなる可能性があります。
また、お母さんや叔母さんの更年期の不調はどうだったか、閉経はいつだったかを聞いておくことも、ご自分のこれからの更年期を知るための参考になります。知っておけば、準備や予防もしやすいですね」(対馬先生)
更年期前に、予防のためにできることは、婦人科を定期的に受診しておくことも大切です。20代、30代、40代前半の生理周期にまつわる不調を、改善しておくことが大切。低用量ピル(OC、LEP)や漢方薬などを使って、不調への対処法を行なっていれば、更年期の不調対策の練習にもなります。海外の女性は、低用量ピルからHRTへ、更年期を境に上手に移行していく対策をとっている人も少なくありません。
「そのためにも、20代、30代から婦人科医をかかりつけ医にして、定期的に子宮頸がん検診を受けたり、何か不調があれば相談することに慣れてほしいです。自分の体は、自分の希望でコントロールできることを経験すると、とてもラクになれます。なりたい自分になるための方向に持っていくのです。脳は意外と単純に、信じ込ませることができますよ(笑)」(対馬先生)
更年期の予防や不調対策のために、自分でケアできることはいろいろあります。食事(栄養)や運動などの生活習慣は、想像以上に効果があります。
「何か対策をしてみようという方は、まずは、生活リズムを整えることから始めましょう。生活習慣の乱れは、更年期症状を悪化させる原因のひとつです」と対馬先生。
夜は、少しでも早めに寝るようにして睡眠時間を確保すること。朝起きる時間はできるだけ同じにして、カーテンをあけて朝日を浴びること。食事時間もできるだけ一定にすることが大切です。
食事(栄養)は、ミネラル不足が問題とされていますので、鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、それに各種ビタミンを積極的に摂るようにしましょう。タンパク質も上手に摂ることが大切。納豆、豆腐などの大豆製品は、タンパク質豊富で大豆イソフラボンなども摂れるので、おすすめです。
適度な運動は、どの年齢にとってもメリットが高く、更年期対策としても有効です。骨、関節、尿もれ、不眠対策にもなり、低下した胃腸の調子をよくする効果もあります。
運動の種類としては、これまで運動経験のない人は、ウォーキングや水泳などの有酸素運動から始めてみてはどうでしょう。1日30分が目安です。ウォーキングなら1回10分を3回に分けてもOKです。
「自分に合った運動の仕方を見つけ、少しずつ長くできるようにしていきます。大切なのは継続すること。こうなりたい自分を目標にして、自分で自分をプロデュースするイメージです。更年期は特別なケアでなく、一歩一歩自分らしさを探して継続していけばいいのだと思います。一発で勝負しない。失敗や後悔があっても次に生かせればいいんです」(対馬先生)
自分で工夫してみて、自分に合った方法を見つけていくのが更年期対策になります。そのときに正しい知識を得るために、婦人科の専門医や栄養や運動、メノポーズカウンセラーなどのプロに相談しアドバイスを受けることも大切。専門家とキャッチボールをしながら、自分のヘルスケアやアンチエイジングに統合していくことができます。
「人生100年時代になって、更年期はちょうど人生の真ん中です。これからできることはたくさんあります。新しい時代を生きる私たちは、今までの女性の生き方はロールモデルにならないところが多いです。もっと個性的に、クリエイティブに、自分らしい生き方をワクワクしながら、模索して開発していけたらいいですね」(対馬先生)
イラスト/佐藤 尚美
Instagram:@naomisatoh_design
お話を伺ったのは…対馬ルリ子先生
(医療法人社団 「ウィミンズ・ウェルネス 女性ライフクリニック銀座・新宿」理事長)
つしまるりこ●産婦人科医・医学博士。周産期学、ウィミンズヘルスが専門。
1984年、弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年に「ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック」を開院。「20歳になったら年に1回は婦人科検診を受けましょう。生き生きとあなたらしい人生を築いていくために、私たちをかかりつけ医として利用してください。いつでもあなたに寄り添う存在でいたいと思っています」。著書に『「閉経」のホントがわかる本』(集英社・共著)ほか多数。
取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。数多くの雑誌、WEBマガジンで連載。乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。
著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。
詳細は増田美加オフィシャルサイト参照。
カフェやスパ、医療機関の揃う伊勢丹新宿店本館地下2階にショップを構えるビューティ&ヘルスケアのトータルショップ。
“今”も“これからも”美しく健康でありたいと願うお客さまのかかりつけショップでありたい。その想いから、お客さまそれぞれの「ありたい自分」を叶えるアイテムを、コスメ、フレグランス、フード、インナーサポートなど幅広く取りそろえてご紹介しています。
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