便秘の原因と解消方法・薬の選び方
~便秘症は治すべき病気です! そのセルフケア、間違っていませんか?~
【医師監修 知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方】 vol. 11

2025.7.25

コラム

シリーズ連載「知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方」はあなたの心と体に寄り添って、より自分らしく快適に生きるためのコツを専門の医師からアドバイスしていただくシリーズ。伊勢丹新宿店地下2階にある美と健康のショップ「イセタン ビューティーアポセカリー」でお悩みの多いカテゴリーをピックアップし、自分をもっと好きになるために、今できるケアの情報をお伝えしていきます。

今回のテーマは特に女性に多い便秘。その便秘対策、間違えていませんか? 便秘の原因はさまざまありますが、女性特有の原因もあるのです。便秘を改善するためにも、女性に便秘が多い理由と便秘がもたらす体への影響を知っておきましょう。便秘の解消方法として、毎日の生活で気をつけることや市販の便秘薬の選び方についても、便秘症治療の第一人者、中島淳先生に伺いました。

便秘の原因と解消方法・薬の選び方 ~便秘症は治すべき病気です! そのセルフケア、間違っていませんか?~ 【医師監修 知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方】 vol. 11
中島淳(なかじまあつし) 先生 

お話を伺ったのは

中島淳(なかじまあつし) 先生 

国際医療福祉大学 消化器内科統括教授

大阪大学医学部卒業。社会保険中央総合病院内科、東京大学第三内科助手、ハーバード大学客員研究員、横浜市立大学第三内科、横浜市立大学先端医科学研究センターセンター長、横浜市立大学学術院医学群長、横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室主任教授を経て現職。『慢性便秘の診療ガイドライン2017』作成委員。『便通異常症診療ガイドライン2023』評価委員でもある。

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。数多くの雑誌、WEBマガジンで連載。乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。

著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。

詳細は増田美加オフィシャルサイト参照。

便秘の原因

便秘が女性に多いわけ

何日も便が出なかったり、残便感があったり、お腹が張ったり痛んだり、便秘をすると日常生活に支障をきたすことも少なくありません。なぜ、便秘は女性に多いのでしょうか?

 

「女性に便秘が多い理由は、いくつもあります。女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)は、腸管運動を低下させる働きがあるので、便秘を引き起こす原因になります。これは、妊娠したときに赤ちゃんを安全に産むために体を守るための作用なのです。プロゲステロンの分泌量が多い、生理前のPMS(月経前症候群)の時期は、便秘になる人が多いですね」と中島淳先生。

便秘の原因 便秘が女性に多いわけ

ダイエットで朝食を食べていない人はいませんか? 朝食の欠食やダイエットも便秘の原因のひとつと言われているのです。

私たちは朝食を食べたあとに、腸の蠕動運動が起こり、便意を感じやすいのです。朝食が少量だったり、食べなかったりすると、この自然な便意が起こりません。朝、トイレに行く十分な時間がなく、急いで出勤してしまい、便意を逃してしまう人も少なくありません。便意が起きても、外出先では便意を我慢してしまう人も増えていて、このことも便秘の原因になっています。

 

それから、便を押し出すためには、ある程度の筋力が必要です。女性は男性に比べて筋肉量が少ないため、便秘につながりやすいという理由もあります。なかには便が硬くなり、自然には排便できないため、自分の手で便を取り出す摘便を行なっている人もいるのです」(中島先生)

 

便秘があると、腹痛やおなかの張り、不快感だけでなく、肌荒れや吹き出物が出たり、女性にとってはストレスになりQOLが低下します。便秘を改善しないことによる悪影響は、仕事や日常生活の活動性の低下につながってしまい、さらに便秘を誘発する悪循環を起こすことがわかっています。さらに血圧が上がったり、心臓血管系の病気のリスクが上がったりと、便秘が寿命を短くするというデータも出ています。便秘は改善すべき病気なのですね。

どんな人が慢性便秘症なの?

では、どのような便秘症状だと、慢性便秘症にあたるのでしょうか?慢性便秘症の可能性がある自覚症状を紹介します。

【当てはまる人は慢性便秘症の可能性があります】

【当てはまる人は慢性便秘症の可能性があります】

「残便感や少量しか出ないといった症状があっても、毎日少しでも排便があれば、“便秘ではない”と医師から言われた方がいるかもしれません。けれども今は、たとえ毎日排便があっても、トイレで出にくいなどの排便困難感や残便感、不快感、うさぎの糞のような硬い便など、便秘に伴う症状で日常生活に支障があれば、慢性便秘症と診断して治療の対象になるという考え方になっています。

それは、慢性便秘症が循環器疾患や脳血管疾患、慢性腎臓病、認知症など、寿命にかかわる重大な病気との関連がわかってきたからなのです」(中島先生)

便秘の解消方法

大事なのは朝の「トイレ時間」の確保

トイレを我慢していませんか? 便意がなくなるのは、我慢してトイレに行かない生活習慣が関係しています。便意を我慢しているうちに、神経が働かなくなり慣れてきます。これを継続しているうちに便意は喪失する習慣に。治療しても便意がなかなか戻らない人もいるのです。

 

便意をなくさないようにすることが大事です。食後リラックスして、副交感神経が優位になる時間の余裕をもつことが必要なのです。バタバタと仕事や学校に出かけるのはダメ。朝ご飯を食べて、腸が動いて便意をもよおすまで約30分~60分かかるのが正常です。

便意がある人は大丈夫ですが、便秘気味で便意が弱い人は、なおさら食後ゆったりした時間をもちましょう」(中島先生)

 

慢性便秘症の人は、便意が来ない人がほとんど。病院の治療では、薬を使ってでも便意を回復させることを大切にしています。ガイドライン(2023年7月改定)でも、便意回復の重要性を謳っています。

 

「たとえば、朝起きたら水を飲んでカンタンな体操をして、朝食をしっかり摂って家を出るまで1時間ほど余裕をもつ。そうすると便意が来て、排便してから出勤できます。それを1~2回経験すると患者さんの満足度、達成感は上がり、継続できるようになっています。環境としてフレックス制やテレワークが進んできているので、工夫してトイレ時間を作ってみてください」(中島先生)

食事で気をつけるべきは、「油」と「食物繊維」

食事で気をつけるべきは、「油」と「食物繊維」

朝食では、水分とともに少量の油を摂取しましょう。オリーブオイルでもバターでも良いです。便が硬い人は、油分不足の可能性もあります。

 

「ほかにも食物繊維は、重要です。食物繊維は、1日20g摂って欲しいです。20gはキャベツ1玉の量に相当します。江戸時代は1日100g摂っていたそうですから、現代人は圧倒的に不足しています。

慢性便秘症の20代の患者さんは、1日2~3gしか摂っていない人が多く、食物繊維の不足で便のカサが少なく、つるんと押し出すことができません。排便時にいきむと、血圧上昇に繋がりますのでNGです。おすすめの便秘改善食材を紹介します」(中島先生)

食事で気をつけるべきは、「油」と「食物繊維」

食物繊維の中でも、水溶性食物繊維であるネバネバ食品がおすすめ。海藻類、納豆、オクラ、キノコ類も良いですね。腸内細菌の善玉菌のエサとなり善玉菌を増やします。

 

食物繊維は、1日20gが目安。キャベツなら1玉、ニンジン5本、リンゴ6個です。頑張っていろいろな食品で摂らないと、現代人の食事では不足します玄米や雑穀など、主食で食物繊維が豊富な食材を選ぶことがポイントです。

 

●大腸が動くためには、胆汁酸が分泌されて大腸に届くことが大事。胆汁酸が分泌されるような食材は、卵、良質の油です。油抜きは良くありません

 

お酢は脂肪細胞を減らして、体重減少や糖尿病にも良いと言われています。1日大さじ1杯のお酢を摂りましょう。水溶性食物繊維のモズク酢なども良いですね。

お通じにとって「排便姿勢」は重要

無理にいきまないためにも、排便姿勢はとても重要です。腹圧をかけて便を押し出す際に、便の出やすい方向があります。背筋を伸ばしてまっすぐ座る姿勢では、排便しづらいのです。かといって前傾しすぎも、後傾しすぎもダメ。ロダンの考える人のように脚を床につけ、肘が膝につく前傾姿勢35度がベストです」(中島先生)

【排便に良い姿勢とは?】

大切なのは、膝に肘がつく35度の角度と脚が床につくことです。床に脚がつかない場合は、踏み台を置いて、脚に体重がかけられるようにします。

【排便に良い姿勢とは?】

便通改善のための運動は、どのようにとり入れたらよいでしょうか?

 

定期的な運動は、便通のためにも、健康のためにも重要です。運動中は、交感神経が優位になるので、腸の運動は止まります。しかし、運動を終えた後、副交感神経が優位になるので、便意が来ます。交感神経のメリハリをつけることにつながり、便秘改善に良い効果があります。

 

運動ができないときには、腹部マッサージをします。おへその周囲を軽く手で押しながら、時計回りに優しくなぜるように約15分が目安です。それから、おならは我慢せずに出すことも大事です」(中島先生)

 

便秘改善のためには日ごろの食事、排便姿勢と日常生活の改善が大切です。睡眠時間をたっぷりとる、規則正しい生活と食事、食物繊維と水分を十分とる、定期的に運動をすることは、セルフケアですべきことです。

市販の便秘薬と選び方と病院受診のタイミング

市販の便秘薬は、何を選べば良いのでしょうか? 気をつけるべき便秘薬はあるのでしょうか?

 

腎臓の病気がない方なら、市販薬の浸透圧性(非刺激性)便秘薬(酸化マグネシウム、ラクツロースなど)をまず使ってみるのは良いと思います。

市販薬で注意したいのは、刺激性便秘薬です。アントラキノン系(センノシド、センナ、大黄など)、ジフェニール系(ピコスルファートなど)、ジフェニルメタン系(ビサコジルなど)があり、使う場合は頓服としてそのときだけに留めましょう。長期間連用すると耐性ができ、難治性便秘になるリスクがあります。市販の便秘薬を使うときには、気をつけてください。

浸透圧性(非刺激性)便秘薬で効果がなかったら、病院を受診してください。ここ数年、病院で処方できる新しい便秘薬がいろいろ出て来ています」(中島先生)

 

病院を受診したほうが良い便秘症は、どのような便秘でしょうか?

 

「便秘症の3大症状としては、「排便回数の減少」「排便困難感」「残便感」があります。病院に行って検査をしたほうが良いのは、最近急に便秘になった、血便が出たり、貧血あったりする、などです。気をつけたほうが良い方は、大腸の病気をしたり、家族に大腸の病気をした方がいる場合です。気になる方は、消化器科を受診してください」(中島先生)

【病院を受診したほうが良い症状】

【病院を受診したほうが良い症状】

参考資料/「日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン 2017」南江堂

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イラスト/佐藤 尚美

 Instagram:@naomisatoh_illustration

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