2024.8.23
コラム
シリーズ連載「知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方」はあなたの心と体に寄り添って、より自分らしく快適に生きるためのコツを専門の医師からアドバイスしていただくシリーズ。伊勢丹新宿店地下2階にある美と健康のショップ「ビューティアポセカリー」でお悩みの多いカテゴリーをピックアップし、自分をもっと好きになるために、今できるケアの情報をお伝えしていきます。
7回目のテーマは、更年期以降の尿もれ・頻尿のケアについて。GSM(閉経関連尿路性器症候群*)って知っていますか? フェムゾーン(デリケートゾーン)のイガイガ、ヒリヒリ、乾燥、かゆみやくり返す膀胱炎などはありませんか? その対策やクリニックでの治療法を女性泌尿器科医師の関口由紀先生に伺いました。
*GSM=Genitourinary Syndrome of Menopause
取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
フェムゾーン(デリケートゾーン)がイガイガ、ヒリヒリして、かゆみを伴うことや、膀胱炎をくり返すことなどはありませんか?
フェムゾーンとは、腟、外陰部、肛門周りの場所を指します。腟は、腟前庭部と腟内に分かれます。外陰部とは、小陰唇や大陰唇などです。
更年期からは、頻尿や尿もれが気になるところですが、ほかにも外陰部(小陰唇、大陰唇)や腟の乾燥などによるイガイガやヒリヒリ、繰り返す膀胱炎が始まり日常生活に支障をきたす人も少なくありません。
「これは、GSM*(閉経関連尿路性器症候群)の可能性があります。 GSMの症状は、外陰部や腟の乾燥、灼熱感、かゆみ、尿もれ(腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁)、頻尿(過活動膀胱)、繰り返す膀胱炎、性交痛などさまざまです。
女性ホルモンのエストロゲンの低下に伴って、外陰部や腟の粘膜、皮下組織が萎縮したり、脆弱化したりして、尿路や性器の症状が起こる病気のことです。
女性の2人に1人がこれらの症状に悩んでいると言われていて、 GSMのトラブルは自然には治りません。放っておくとゆっくりと、確実に進んでいきます」と関口由紀先生。
症状が気になる場合は、早めに専門医に相談することが大事だと言えるでしょう。
*GSM=Genitourinary Syndrome of Menopause
腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、過活動膀胱についての詳しい説明はコチラ➤
フェムゾーンとは、腟、外陰部、肛門周りの場所。腟は、腟前庭部と腟口とその内側の腟内に分かれます。外陰部とは、小陰唇や大陰唇などです。
気になる人は、GSMの症状チェックがありますので、やってみてください。当てはまる症状があれば、GSMが始まっている可能性があります。
「まずは、その症状がGSMかどうかを診断します。ヒリヒリやかゆみを伴う症状の中には、ヘルペスや接触性皮膚炎、扁平苔癬などの病気の可能性もあるため、きちんと診断してもらうことも大切です。
診察してGSMであれば、女性ホルモンの低下によって起こる症状に対してのケアや治療を行います。
GSMの対策で重要なのは、①骨盤底トレーニングと②保湿です。まずはクリニックで、これらのやり方を説明します」(関口先生)
①骨盤底トレーニングは、腟をゆっくり内側に引き込むトレーニングです。軽い尿もれや頻尿なら薬を使わず、腟をゆっくり内側に引き込む骨盤底筋トレーニングが有効です。全ての原因による尿もれ・頻尿の約70%は改善するというエビデンスがあります。
呼吸法を加えた骨盤底筋トレーニングは、尿トラブル改善だけでなく、おなか周りの筋肉を使うので、姿勢もよくなり、余分な脂肪もとれます。
②保湿は、閉経前の人で、特に症状がなければ使用するオイル・ジェル・クリームなど保湿剤は、全身に使えるボディ用のものでも大丈夫。閉経前のフェムゾーンは丈夫なのです。
ボディ用の一般保湿剤でヒリヒリする人や、フェムゾーンの乾燥、萎縮、性交痛などがあるGSMの人は、敏感になっているのでフェムゾーン用の保湿剤(会陰マッサージ用オイルでもOK)を使います。
指の第2関節までを腟の中に入れ、入り口周囲をグルっとマッサージします。保湿剤の塗り方は、手のひらに保湿剤をとり、クリトリスと尿道の間、腟の中、小陰唇や大陰唇、肛門までやさしく塗ります。
併せて、インナーコアマッスルや下半身の筋トレ(スクワットやランジ)も効果的です。
また、頻尿の人は、尿を溜められるようにする膀胱訓練も大切です。トイレは我慢しない方がいいと思っている人がいますが、我慢して尿を溜められる膀胱にすることも大切です。
1日4~8回の排尿で済むように、少しずつ我慢して間隔があけられるようにします。
「骨盤底トレーニングや保湿などのセルフケアで効果が得られない場合は、健康保険が使えるエストロゲンの腟錠やホルモン補充療法(HRT)という選択肢もあります。
また、皮膚や粘膜の乾燥や萎縮によるイガイガ、ヒリヒリには、弱いエストロゲンクリーム剤を処方することもあります。
エストロゲンでは期待する効果が得られない人には、微量の男性ホルモン(テストステロン)クリーム剤を処方することもあります。
当クリニックでは、頻尿、尿もれや腟や外陰部の乾燥、萎縮、性交痛に対して、腟や外陰部へのレーザーを照射する治療も行っています。
最近では、レーザーなどの治療機器の種類も増えていて、「ハイフ(高密度焦点式超音波)」「エルビウムYAGレーザースムースモード(インティマレーザー)」「フラクショナルCO2レーザー(モナリザタッチ®)」をその人に合わせて、使い分けています」と関口先生。
フェムゾーンへのレーザー治療は、腟内や外陰部を照射して、コラーゲンの生成を行い、粘膜・腟壁の厚みが増して、腟のゆるみや乾燥、萎縮、頻尿や尿もれを改善します。
腟粘膜の線維芽細胞が活性化し、コラーゲンが生成されることで、腟にふっくらとした厚みとヒダが戻り、うるおいのある状態に改善します。その結果、腟萎縮による不快症状が起こりにくくなります。
レーザーの使い分けですが、「ハイフ」は、比較的軽症の人でおもに30代~40代。皮下組織、その下の筋膜や筋肉に強めのエネルギーが入ります。そのため、フェムゾーンの引き締め効果が高いです。
「エルビウムYAGレーザースムースモード」は、引き締め感が実感できますが、より腟や外陰部のふっくら感を求めたい人に。おもに40代~60代向けです。比較的弱めの光が粘膜上皮から皮下組織、筋膜、筋肉組織まで広範囲に届きます。頻尿、尿もれなどの対策としては、第一選択肢になります。
腟・外陰への「フラクショナルCO2レーザー」は、GSMなどの不快な症状を緩和するために開発された新しい治療法です。腟、外陰部のふっくら感、そして何よりしっとり感も出ます。顔のリフトアップやたるみ改善に使われるフラクショナルCO2(炭酸ガス)レーザーを応用して、フェムゾーンを照射するレーザー治療です。
フェムゾーン領域の治療は、格段に進歩しています。新しい薬や治療法ができ、種類も増えました。自分に合った治療を選ぶことができます。躊躇せず、フェムゾーンのケアや治療ができる時代になりました。
人生100年時代。更年期からの女性の人生を健やかに生きるためには、フェムゾーンケアが大切です。尿もれ、乾燥、かゆみ、痛みがあってはQOLが下がり、自分らしくご機嫌に過ごせません。今から更年期以降を見越して、フェムケアを始めていきましょう。
イラスト/佐藤 尚美
Instagram:@naomisatoh_design
お話を伺ったのは…
関口由紀(せきぐちゆき) 先生
女性医療クリニックLUNAグループ理事長
(株)フェムゾーンラボ社長 一般社団法人日本フェムテック協会代表理事。横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学終了。医学博士。現在、横浜市立大学医学部泌尿器科客員教授として女性泌尿器外来を担当。日本泌尿器科学会専門医・指導医。著書に『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期』(産業編集センター)ほか多数。
取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。数多くの雑誌、WEBマガジンで連載。乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。
著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。
詳細は増田美加オフィシャルサイト参照。
カフェやスパ、医療機関の揃う伊勢丹新宿店本館地下2階にショップを構えるビューティ&ヘルスケアのトータルショップ。
“今”も“これからも”美しく健康でありたいと願うお客さまのかかりつけショップでありたい。その想いから、お客さまそれぞれの「ありたい自分」を叶えるアイテムを、コスメ、フレグランス、フード、インナーサポートなど幅広く取りそろえてご紹介しています。
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