2025.5.28
コラム
シリーズ連載「知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方」はあなたの心と体に寄り添って、より自分らしく快適に生きるためのコツを専門の医師から解説・アドバイスしていただくシリーズ。伊勢丹新宿店地下2階にある美と健康のショップ「イセタン ビューティーアポセカリー」でお悩みの多いカテゴリーをピックアップし、自分をもっと好きになるために、今できるケアの情報をお伝えしていきます。
女性の不快症状の第1位が肩こり。スマホやパソコンによるストレートネックが原因の慢性的な肩こりも増えています。この記事ではつらい痛みを伴う肩こりを効果的に改善する日常で行えるストレッチやマッサージ方法を紹介しお悩み解消に導きます。女性のヘルスケアにも詳しい整形外科医の青山朋樹先生に伺いました。
お話を伺ったのは
青山朋樹(あおやまともき)先生
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 教授
医学博士。群馬大学医学部医学科卒業。京都大学医学研究科博士課程。京都大学医学部附属病院整形外科ほかを経て現職。専門はリハビリテーション医学、整形外科学、再生医学。運動を用いた健康アプローチとしてのトレーニングをウィメンズヘルスのほか、幅広い分野で研究している。
取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。数多くの雑誌、WEBマガジンで連載。乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。
著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。
詳細は増田美加オフィシャルサイト参照。
日本人の約1700万人が肩こりを感じて訴えていると言われています*。特に女性のお悩みに多く肩こりに悩んだことがない女性はいないのでは?と思うほど、肩こりは日本の女性にとって究極の悩みだと思います。子どものころはなかった肩こりに、悩まされるのは、なぜなのでしょうか?
*国民生活基礎調査(2016年)
「筋肉と関節から、いくつかの原因が説明できます。加齢によって、肩周辺(肩まわり)の組織がもろくなり始めること、関節の動きをスムーズにする関節包や滑液包の潤滑液が減ってくること、肩関節は動く範囲が大きいために骨以外の組織が引っ張られやすいことなどがあります。人間はどうしても老化しますので、年々、筋肉、筋膜などの筋バランスが悪くなってきてしまうのが、肩こりが増えてくる要因です。
また、肩こりが女性に多いのは、女性ホルモンのゆらぎと関係することもあります。PMSや更年期障害などで、女性ホルモンが乱れるときに連動して自律神経も乱れやすくなります。自律神経の乱れによる肩こりも考えられます」と青山朋樹先生。
肩こりは、病名ではありませんが、病気(疾患)に伴った肩こりというのもあるのでしょうか?
「整形外科の領域で言えば、胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)が若い女性に多いです。腕の神経や鎖骨の下の動脈が胸郭の出口部分の場所で絞めつけられたり、圧迫されたりすることで、上肢の痛みや手指のしびれ、指先が冷たい、肩こりなどさまざまな症状を引き起こす病気です。
もうひとつ、頸肩腕症候群(けいけいわんしょうこうぐん)といって首から肩、腕にかけての痛みやしびれ、筋肉のこりなどの症状が生じる病気で、パソコン仕事が多くなって言われるようになった病名で労災の対象にもなっています。
肩こりの隠れた要因として、ストレスなどの心因性のものもあります。それから、血流が悪いことも大きな要因になりますね。ごくまれにですが、内臓の病気や乳がんなどによる肩周辺の部位の痛みもあります。肩やその周辺の首、背中の痛みが強く続く場合は、整形外科で相談してください」(青山先生)
肩こりの早期発見サインとして、姿勢などのセルフチェックで治せることはありますか?
「簡単にできるのは、鏡で正面から見たときに左右の肩の高さがアンバランスになっていないかを見ることです。肩の先と鎖骨が左右同じ高さにきているかを見てみましょう。左右どちらかに傾いていると、どちらかの筋肉に負荷がかかるので、肩こりにつながりやすい姿勢と言えるでしょう」
左右の肩の位置がどちらかに傾いていないか、鏡でチェックしてみましょう。
ストレートネックも若い人の肩こりの原因に多いと言われていますが、ストレートネックが原因の肩こりもあるのでしょうか?
「頸椎(首の骨)がまっすぐになっている状態がストレートネックです。横から見ると本来、背骨は首から腰にかけてS字カーブを描いています。けれども、スマホやパソコン画面を覗き込むような悪い姿勢で見る習慣がつくと、自然な背骨のカーブが失われて、まっすぐになってしまうことがあります。ストレートネックは、病名ではなく状態を表す言葉ですが、ストレートネックが原因で、肩こり、首こり、頭痛や腰痛まで生じることもあります。
ストレートネックのいちばんの原因は、スマホやパソコンを長時間、悪い姿勢で見すぎること。普段から猫背ぎみの人は頭が胸よりも前に出て、ストレートネックになりがちです。枕の高さが原因になるという指摘もありますが、寝た状態では重力がかかる方向が異なり、頭の重さが首に負担をかけないため、主要な原因とは言えません。
特に女性は、なで肩体形や肩回りの筋力が弱い人が多いため、負荷がかかりやすく、男性に比べてストレートネックになりやすいのです。
ストレートネックの人は、10代から肩こりに悩む女性も少なくありません。もちろん生活習慣だけでなく、生まれながらの体形で肩こりになりやすい人もいます」(青山先生)
自分がストレートネックかどうかを知る方法はありますか?
「ストレートネックになりやすい人のチェックリストを紹介します。下記に当てはまる人は、ストレートネックになっている可能性があります」(青山先生)
□普段から姿勢が悪く猫背(前かがみ)
□デスクワークが多い
□仕事でノートパソコンを使っている
□スマホを長時間使用する
□多忙でストレスが多い
パソコンやスマホの長時間使用が影響してストレートネックになりやすいのは、操作するときに顔が下を向きがちだからです。頭が体の前に出ているということは、すでにストレートネックの状態になっているのです。スマホは、なるべく顔の正面か、視線をほんの少し下げるくらいの位置に持ち上げて見るようにしましょう。タブレットもスタンドなどを利用して、机に置いて見るようにします。長時間、首を前に傾けないように注意することが大切です。
「忙し過ぎたり、ストレスが多かったりすると、自律神経の交感神経が優位になって、首や肩の筋肉が緊張し、固まってしまいます。ストレートネックの状態が定着してしまうのです。こまめに肩回りを動かすことを心掛け、血行不良で固まらないように血行をよくすることも大切です」
肩こりの対処法には、筋肉を動かすことが大切。デスクワークが長く続くときは、できれば1時間に1回、立ち上がってください。そのときに、簡単にできるエクササイズとストレッチを紹介します。
肩甲骨を動かすことで肩こりを改善、予防できます。ひじを曲げて肩甲骨を後ろに寄せたまま、両腕を大きく回すことで肩甲骨も一緒に動きます。内回し、外回し5回ずつを1セットで、1日3セットくらい行います。肩甲骨動かすことで姿勢もよくなり、胸郭出口症候群の人にも良い運動です。
手を後ろで組んで、胸を開きながら肩甲骨を寄せるように腕を後方に伸ばすストレッチをします。約5秒伸ばします。これを3セット。なで肩や姿勢が悪い人にも良いストレッチです。顔を上げて、胸を張るイメージで行いましょう。
「肩甲骨のストレッチは、毎日繰り返し続けることが大事です。肩こりだけでなく、美しい姿勢も手に入れられます。また、ウォーキングを20分程度行うことも肩こり対策になります。腕をしっかり振って、胸を張って歩くと肩甲骨周りのストレッチにも。有酸素運動は、交感神経を適度に上げて、副交感神経とのバランスを整える役割があります。姿勢も整い、血流を上げることにもつながります」
肩こり対策には、冷え防止が大事です。体を温めて血行を良くして、硬くなっている筋肉をほぐすことも大事と言われています。血行促進のために、シャワーだけで済ませずにゆっくり湯船に入って入浴し温まることをおすすめします。お気に入りの入浴剤を入れるとリラックス効果が高まります。首周りを温めることも大切です。
「自律神経が乱れて肩こりが起きているときには、カフェインや刺激が強い食べ物、飲み物は控えて、交感神経を鎮めるお茶や胃腸に負担をかけないものをとるといいでしょう。甘くて冷たいものは、おなかの負担になり、自律神経のバランスが崩れることがあるので控え目にすることが必要です」
肩こりで市販の湿布剤を使うときは、冷感と温感のどちらを使うか迷います。どちらが正しいのでしょうか?
「消炎鎮痛薬は、冷湿布でも温湿布でも効果は同じです。どちらでも気持ちのいいほうで構いません。肩こりは、筋肉が硬くなって血流が悪くなっているので、血流をよくしてリラクゼーションになるという意味では、温湿布がいいかもしれません。でも、冷湿布でも気持ちがよければそれでOKです」(青山先生)
ライフスタイルの見直しやセルフケアを行なっても我慢できない、長引く肩こりは、整形外科などのクリニックを受診しましょう。
「病院で行う治療は、お薬を使った治療が中心です。薬物療法には、外用薬、内服薬、注射薬の3つがあります。
外用薬には、消炎鎮痛薬を配合した湿布やローション、ゲル、スプレーなどがあります。使い勝手が良いものを医師と相談して選びましょう。
内服薬は、炎症を抑えて痛みを軽減させる消炎鎮痛薬などがあります。そのほか、筋肉の疲労をやわらげて、神経機能の回復や筋肉の疲労回復を促すビタミンB1やB6を処方することもあります。また、ビタミンEは血流を改善、ビタミンB12は神経の機能を回復させるといった効果も。そのほか、漢方薬でも治療します。
外用薬、内服薬でも痛みが改善しない場合、注射という選択肢もあります。筋肉への注射と神経への注射があります。筋肉への注射は、局所麻酔薬やステロイド薬を。神経への注射は、神経ブロック注射を肩こりの原因となる神経に注射します。
整形外科のクリニック選びは、漢方薬を処方してくれるクリニックは話をよく聞いてくれていいと思います。また、リハビリテーションを併設している整形外科も、姿勢や体の歪みを診てくれるのでいいでしょう」(青山先生)
セルフケアではどうにもならないときは我慢せず、整形外科で治療すると薬の選択肢もあっていいですね。温めて動かすことが重要ということもわかりましたので、実践していきたいです。
イラスト/佐藤 尚美
Instagram:@naomisatoh_illustration
カフェやスパ、医療機関の揃う伊勢丹新宿店本館地下2階にショップを構えるビューティ&ヘルスケアのトータルショップ。
“今”も“これからも”美しく健康でありたいと願うお客さまのかかりつけショップでありたい。その想いから、お客さまそれぞれの「ありたい自分」を叶えるアイテムを、コスメ、フレグランス、フード、インナーサポートなど幅広く取りそろえてご紹介しています。
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