2024.10.11
コラム
シリーズ連載「知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方」はあなたの心と体に寄り添って、より自分らしく快適に生きるためのコツを専門の医師からアドバイスしていただくシリーズ。伊勢丹新宿店地下2階にある美と健康のショップ「ビューティアポセカリー」でお悩みの多いカテゴリーをピックアップし、自分をもっと好きになるために、今できるケアの情報をお伝えしていきます。
8回目のテーマは、10月のピンクリボン強化月間にちなんで、乳房ケアについて紹介します。有名な女性タレントさんが乳がんを告白したことで、「検診で見つからない乳がんってあるの?」と不安や疑問を持った方もいるでしょう。乳がんの早期発見に役立つ、セルフチェックの方法と乳がん検診、そして今話題の「ブレスト・アウェアネス」について、乳腺専門医で放射線診断専門医でもある島田菜穂子先生に伺いました。
お話を伺ったのは…
島田菜穂子(しまだなおこ)先生
ピンクリボン ブレストケアクリニック表参道 院長
NPO法人乳房健康研究会副理事長。
1988年 筑波大学医学専門学群卒業。その後、筑波大学付属病院放射線科、つくばメディカルセンター放射線科、東京逓信病院放射線科乳腺外来開設。1998年~1999年 米国ワシントン大学メディカルセンターブレストヘルスセンター留学。2001年、日本初、乳がん啓発ランニングウオーキングイベントを開催。2008年より現職。
日本医学放射線学会放射線科診断専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、日本乳癌検診精度管理中央機構認定マンモグラフィ読影指導医。乳房超音波診断認定医、日本がん検診診断学会認定医
取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。数多くの雑誌、WEBマガジンで連載。乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。
著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。
詳細は増田美加オフィシャルサイト参照。
いま、乳がんは9人に1人がかかるがんです。乳がんは、ほかのがんと比べて、働き盛りの若い世代に多く発症します。ほかの多くのがんは、60代70代80代と年齢が上がるごとに増えていきますが、乳がんは少し違います。
妊娠・出産前の若い年代にも発症し、ピークは働き盛りの40代から60代。最近は欧米と同様、それ以降の高齢者の乳がんの増加も目立ってきました。毎年、9万人以上の女性が乳がんにかかっています。
きっと周りにも、乳がんにかかっている方がいると思います。もう乳がんは他人事ではありません。
「乳がんは、早期発見が何より大切です。早期発見なら、比較的治りやすく、5年相対生存率(5年間生きる確率)は約92%と高く、1期の早期乳がんなら、約98%が治ります。治療後も、治療前と変わらず元気に活動でき、妊娠・出産も可能な人がたくさんいます。
いま、年間に9万人の乳がんが発見されますが、そのうち、0期~1期と早期で発見された人が5万人を超えています。
乳がんは、早期に発見できるがんになっているのです。早期に発見して、早く治療につなげる。そのことで乳がんは、“治る”がんと言ってもよい状況になっています」と話す、乳腺専門医の島田菜穂子先生。
乳がんを早く見つけるには、何をすればいいのでしょうか?
「まず、自分の乳房の普段の状態を知っておくことが大切です。ブレスト・アウェアネス(Breast Awareness)をご存じですか。ブレストは乳房、アウェアネスは意識や気づき。乳房の状態に日頃から関心をもち、乳房を意識する生活習慣です。
普段の自分の乳房の状態を知っておくことで、小さな変化にも気がつくことができるようになります。早期の乳がんは、痛みや体重の増減など、体の変化はほとんどありません。でも、内臓と違って乳房は、手で触れて、形や状態を鏡で見ることができる臓器です。
若いうちから知識を身につけ乳房を意識して普段の状態を知ること、変化を感じたら迷わず受診、相談することが大切です」(島田先生)
「セルフチェックのポイントは、いつもと同じ(正常な状態)を把握することが大事です。乳がん検診で異常ナシのときの正常な状態を把握しておくといいですね。「何が異常なのかわからない」という方がいらっしゃいますが、何も気づかない、どれが異常かわからないってことは、変化がないってことです。異常を見つける、というより、いつもと同じかどうかを確認する意識で良いのです」(島田先生)
「月経(生理)開始後7日から10日に」「毎月〇日に」とすると、忘れてしまうので、お風呂で体を洗うとき、ボディクリームを塗るときなど、毎日行う行動で何気なくセルフチェックをするのがお勧めです。
見るポイント
・左右差はないか
・皮膚の色に変化はないか
・赤く腫れていたり、皮膚が厚く毛穴が目立っていたりしているところはないか
・皮膚のくぼみはないか
・ただれたり、ひっぱられたり、へこんでいるところはないか
・乳首をつまんでみて分泌液は出ないか
・石けんで洗うときやボディクリームを塗るときに触ってみる
・痛みや違和感はないか
・乳房をまんべんなく触る
・鎖骨やわきの下から背中の方向まで触る
・乳房の下の輪郭まで触る
・4本指を揃えて、「の」の字を描くようにクルクル動かす
・わしづかみしない
・手を乳房から離さないで、連続してクルクルする
参考資料/「ブレストケアノート」島田菜穂子著 日本家族計画協会発行
有名な女性タレントさんが乳がんの中でも5%以下という稀な「浸潤性小葉がん」のステージ3Aで見つかったことを告白されました。人間ドックで毎年、検診を受けていたとのことですが、このように、人間ドックの検診でマンモグラフィと超音波と両方を受けていても見つからない乳がんがあるのでしょうか?
「浸潤性小葉がんは、乳房内の小葉というおっぱい(母乳)をつくる部分にできる乳がんです。一般的な乳がんは、乳管というおっぱいの通り道にできます。
浸潤性小葉がんは、通常の乳がんに比べて、乳がんが同時に多発したり、両側の乳房に発生したりすることが多いのが特徴です。
浸潤性小葉がんは、典型的なしこりの塊を作らないこともあり、超音波検査などでわかりにくいこともありますが、マンモグラフィでは過去の検査画像と専門医が綿密に比較すれば、見つけにくいがんではありません。同じ医療機関で継続して乳がん検診を受けること、あるいは、医療機関が変わるときは以前の画像資料を取り寄せて比較読影(診断)を行える施設で検診を受けることで早期発見に繋げられます。」(島田先生)
画像検査は、早期乳がんを発見する優れた方法ですが、どれかひとつの検査だけでは必ずしも100%の乳がんが検出できるとは限りません。仮に、検診を受けた翌日であっても、しこりを感じたり、乳首(乳頭)の出血があったりなど普段と違う症状があれば、検診ではなくすぐに乳腺外科を受診して、その症状の原因が何かを確認してください。
乳がん検診は、いつからどんな検査を受ければいいのですか?
「少なくとも、40歳から2年に1回は、マンモグラフィ検診を受けましょう。セルフチェックで発見できるしこりの大きさは、だいたい2センチ以上です。手で触って何もないからと満足してしまっては、手で触れてもわからない早期の乳がんの発見には不十分です。
マンモグラフィや超音波検査による乳がん検診では、しこりなどの自覚症状が出る前の早い段階の乳がんの発見が可能です。
また、もし乳房のしこり、ひきつれ、乳首から血が出る、乳首の湿疹など、気になる症状がある場合には、その症状の原因を突き止める検査や診察をしないとせっかくのサインを見落とすことになります。ですから検診ではなく、“医療機関をすぐに受診”していただきたいです」(島田先生)
また、「高濃度乳房(デンスブレスト)」という乳房タイプの人が日本人には40~70%います。
マンモグラフィの画像では、脂肪の組織が黒く写って、乳腺組織は白く写ります。また、しこりも白く写ります。ですから、乳腺が多いタイプの乳房の人は、白くてしこりがあってもよく見えません。まるで雪原の白うさぎを探すかのよう、と表現されます。
高濃度乳房かどうかは、マンモグラフィ検診を受けてみないとわかりません。検診の結果が出たら、高濃度乳房かどうかを聞いてみるといいでしょう。
写真提供/NPO法人乳がん画像診断ネットワーク
マンモグラフィで撮影して放射線科医が診断するとき、乳房のタイプを乳腺濃度に応じて4つに分類します。このうち乳腺濃度の高い右2つが高濃度乳房。日本人では約40~70%の人が高濃度乳房と言われています。
脂肪性乳房は、しこりがあるとよく見えますが、高濃度乳房では、しこりがあってもよく見えません。
資料提供/NPO法人乳房画像診断ネットワーク
高濃度乳房のタイプの乳房では、マンモグラフィでは乳がんが見つかりにくく、精密検査を勧められる割合が高い傾向にあります。また、乳がんの発症リスクが高い、という日本女性を対象にした論文も発表されています。
マンモグラフィ検診で、高濃度乳房とわかったら、どうしたらいいのでしょうか?
「現在、行われている大規模検証の中間報告で、高濃度乳房の方の検診には、超音波検査の組み合わせなどの工夫が必要ということを示唆する結果が出ました。
40代の女性に、マンモグラフィ単体で検査をした場合、乳がんの発見率が約70%であったのに対して、マンモグラフィに超音波を組み合わせることで、発見率が約93%に向上したという中間報告です。
現在この研究は、さらにマンモグラフィと超音波検査を組み合わせることによって乳がん死亡率を下げることができるのかという最終的な検証を行っています。
参考:Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial (J-START): a randomised controlled trial”
また、高濃度乳房どうかの乳房のタイプは、年齢によっても変化します。若いときに高濃度乳房でも、年齢を重ねると脂肪性乳房に変化することもあります。定期的なマンモグラフィ検診で、確認することが大切です」(島田先生)
マンモグラフィは痛くてイヤという人もいます。「そんなに痛みを感じない」という人もいる中で、痛いからと、乳がん検診へ向かう足が遠のくのは、早期発見の機会を逃してしまい、残念です。超早期乳がん(0期)の悪性の石灰化を見つけられるのは、現状ではマンモグラフィだけです。何かいい方法はないでしょうか?
「マンモグラフィは、乳房を引き延ばして一部、大胸筋も一緒に透明な板で挟みます。そのため緊張しすぎて筋肉に力が入ってしまうと、痛みを感じやすくなります。リラックスして肩の力を抜いて受けていただけると痛みはずいぶん軽くなります。実は、乳腺は大胸筋の2層の筋膜(大胸筋浅層と深層)の間に存在しています。マンモグラフィを受けるときは筋膜ごと挟み込むことになりますので、
検査を受ける前に、家で大胸筋のストレッチをしたり、筋膜をほぐす筋膜リリースをしたり、してから受けると痛みが少なくなるかもしれません。よければやってみてください。
技師さんがマンモグラフィの扱いに慣れているかどうかも関係するかもしれません。見落としを防いで、精度の高い検診を受けるためにも、【日本乳がん検診精度管理中央機構】という組織で認定資格を行なっています。ここに認定をとっている医師、技師、施設のリストがありますので、施設探しのときに参考にしてみてください」(島田先生)
「1カ月で30キロのランまたはウオーク(速歩)で、乳がん発症や再発の予防効果があることが証明されています。乳がん予防には、1週間で7メッツ程度の運動。これを距離にすると、1カ月の合計30キロで達成できます。運動は骨代謝や筋力アップにもつながり骨粗鬆症や転倒の予防にもなります。運動習慣は、がん予防だけでなく、いつまでも健やかに輝くためにとても大切なのです」と島田先生。
島田先生が副理事長を務める認定NPO法人乳房健康研究会と日本乳癌検診学会2024とのコラボ開催で、「ピンクリボンウオーク2024」が開催されます。
大会期間は、2024年10月1日(火)~11月30日(土)まで。11月30日(土)までエントリー可能
スマホにアプリを入れれば、全国どこでも歩き、走った距離が累積されます。距離は、1キロ、10キロ、30キロ、135キロから選んで参加。好きな時に好きな場所で、好きな仲間と全国どこでも歩いて、走れます。参加賞や豪華賞品が当たります! みんなで歩いて、運動習慣を!ピンクリボン活動にも協力しませんか?
「第20回ミニウオーク&ラン フォー ブレストケア ピンクリボンウオーク2024」
エントリー期間:2024年8月19日(月)~11月30日(土)
大会期間:2024年10月1日(火)~11月30日(土)
主催:第34回日本乳癌検診学会学術総会とNPO法人乳房健康研究会
種目:GPSウオーク1km、10km、30km、135km
参加費:1,000円(税込)
イラスト/佐藤 尚美
Instagram:@naomisatoh_design
ピンクのリボンは乳がんの早期発見・早期診断・早期治療の大切さを伝える活動のシンボルマーク。まずは関心を持ち、正しい知識をひとりでも多くの方に持ってもらいたい。いつまでも健やかでファッショナブルな女性たちのために、三越伊勢丹グループはピンクリボンを応援します。
※ピンクリボン募金は通年で受け付けております。
カフェやスパ、医療機関の揃う伊勢丹新宿店本館地下2階にショップを構えるビューティ&ヘルスケアのトータルショップ。
“今”も“これからも”美しく健康でありたいと願うお客さまのかかりつけショップでありたい。その想いから、お客さまそれぞれの「ありたい自分」を叶えるアイテムを、コスメ、フレグランス、フード、インナーサポートなど幅広く取りそろえてご紹介しています。
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