医師監修 冷えは美と健康の敵 ~冷えを改善する5つの対策方法
【知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方】 vol.3

2024.2.23

コラム

シリーズ連載「知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方」はあなたの心と体に寄り添って、より自分らしく快適に生きるためのコツを専門の医師からアドバイスしていただくシリーズ。伊勢丹新宿店地下2階にある美と健康のショップ「ビューティアポセカリー」でお悩みの多いカテゴリーをピックアップし、自分をもっと好きになるために、今できるケアの情報をお伝えしていきます。

第3回目は、冷えがテーマ。「冷えは万病のもと」と言われるように、冷えは美と健康にとって大敵です。自分ではあまり冷えていないタイプと思っている人が、実は意外と冷えていることもあります。冷え症によって起こる意外な症状や病気、冷えを改善する冷え対策法を内科医で漢方も活用する赤澤純代先生に伺いました。

 

*「冷え症」を「冷え性」と書く場合がありますが、漢方(東洋医学)では、冷えの自覚症状があれば立派な治療対象と考え、単なる冷えている“性質”ではなく、ひとつの“病態”と捉えて「冷え症」と考えます。冷え症によってさらなる病気や症状が起こる可能性もあるからです。

 

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

医師監修 冷えは美と健康の敵 ~冷えを改善する5つの対策方法 【知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方】 vol. 3

【目次】

◆こんな不調がある人は冷えている! 冷え症かもしれません

◆むくみやすいタイプの人は実は冷えている!
◆血流美人になるための5つの冷え対策方法

◆こんな不調がある人は冷えている! 冷え症かもしれません

健康な人が寒さを感じない環境でも、手指や足先、おなか、下半身、ときには全身が凍えるくらい、冷たくなることはありませんか? 

 

冷え症は、全身や手足、下半身など、全身や体の一部が冷えてつらい症状があることです。

女性の冷えからくる症状は、たくさんあって、肌のくすみ、目の下のクマ、生理痛、PMS(月経前症候群)、頭痛、むくみ、肩こり、腰痛、息切れ、動悸、不眠、イライラ、便秘、下痢、膀胱炎なども、冷えからくると考えられます」と赤澤純代先生。

 

このような不調に悩んでいる女性は多いはずです。もしかしたら、それらの不調の原因は、冷えから来ているのかもしれません。

 

「冷え症は、血行不良とエネルギー不足によって起こると考えられています。女性が冷えやすいのは、筋肉量が少なくて、おなかやお尻の皮下脂肪が多いこと、冷えやすいファッション(服装)をしがちなことです。熱をつくるのは筋肉と食事です。筋肉量が少なくて皮下脂肪が多いと冷えやすくなります。無理なダイエットも禁物。エネルギー不足になり、熱が産生できなくなります。また、冷えやすい食事(食べ物や飲み物)も、冷えの原因になります。

 

これらの原因によって、冷えている人に共通しているのは、血流が悪くなっていることです。体のどこが冷えても不調を招き、それが慢性的になれば、どこかに病気のサインが出てきます。血流が悪くて冷えている人の特徴をあげてみます。ここに当てはまる人は、冷え解消のための対策をすることをおすすめします」(赤澤先生)

●【冷えチェック】

●【冷えチェック】

「ビューティフェア2016 ツムラブース冷え相談会でのアンケート」2016年10月を参考に改変。

◆むくみやすいタイプの人は実は冷えている!

女性の体は、女性ホルモンの変動に左右されやすく、デリケート。毎月の生理、妊娠・出産、閉経前後の更年期症状など、女性しか経験することのない体の変化があります。この女性ホルモンの変動も、冷えに影響します。女性は、血流が悪くなりやすく、冷えやすい理由がたくさんあります。

 

冷えとむくみは、リンクしています。冷えと同様、むくみは、血流が低下しているサインです。体に必要な酸素や栄養は、血液によって体のすみずみに運ばれます。筋肉が動くことで血流が促され、心臓に血液が戻されます。ところが、体が冷えていたり、筋肉が少なかったりすると、血流が低下してむくみにつながります。

 夕方に脚がパンパンになるのは、下肢の筋肉、特にふくらはぎを動かさなかったために、足の血流が低下してしまうからです。むくみやすい人は、気づいていないかもしれませんが、実は冷えている可能性大なのです。

 

「昔から冷えは万病のもとと言われ、糖尿病、脂質異常、高血圧、アレルギー、更年期障害、自律神経失調症などにつながりかねません。

 なかには、心不全などの心臓の病気、慢性腎臓病などの腎臓の病気、肝臓の病気、甲状腺機能低下症などの甲状腺の病気などによって、冷えたりむくみやすくなったり、している可能性があります。たかが冷え、と侮らず、長く続くようなら、病院を受診してください」(赤澤先生)

◆血流美人になるための5つの冷え対策方法

たとえば、ホットタオルを顔にあてて、肌のくすみが改善する人は冷えている可能性があります。顔には毛細血管とリンパ管がたくさんありますから、血流が悪い人は、末端まで血液が巡っていないのかもしれません。

 

更年期世代の女性は、自律神経の失調で冷えていることが多いです。ただでさえ、自律神経が乱れやすい更年期世代は、ストレスに出合うと途端に自律神経が乱れやすくなり、冷えてさまざまな不調が出やすいのです。

そうならないために、顔も体も温めましょう。冷えを改善するためには、血流を上げること。そのためには、日常ケア、食事、運動が大切です。血流アップのためのマッサージや冷え改善の漢方薬も有効です」(赤澤先生)

冷え対策1 日常ケア(入浴、衣服)

冷え対策1 日常ケア(入浴、衣服)

簡単にできて効果が高いのは、入浴です。季節を問わず、夏でもシャワーだけで済まさずに、湯船にゆっくりつかることが効果的な冷え対策になります。温かさと浮力と水圧で体に良い入浴ケアになります」(赤澤先生)

温まる時間は、気持ちいいと感じて、じんわり汗をかく、15分程度が目安です。お湯の温度は、交感神経が上がりすぎない38~41℃くらいが良いでしょう。ドキドキ動悸がしない程度にしてください。浴室の寒暖差は体に負担をかけるので、浴室の洗い場は、あらかじめシャワーを出しておくなどして温めてから入ってください。

 

冷えているのに、湯船に温まる時間がない人には、緊急的な対策として、ホットタオルや簡易カイロなどで背中の肩甲骨と肩甲骨の間を温めるのがポイントです。肩甲骨の間には、褐色細胞があって、ここを温めると全身の代謝が良くなります。褐色細胞が機能低下して減ってしまうと、太りやすくなるので、血流を上げて褐色細胞の機能を上げることは大切です。ちなみに褐色細胞は、年齢と共に冷えりやすくなるので、太りやすくなるという面もあるのです」(赤澤先生)

 

また、冷えにくい衣服の工夫をすることも大切。ワンピースより、ブラウスとスカートのようなセパレートの洋服のほうが、ウエスト周りを温め、冷え対策になります。

 

「腰周りに加えて、首周りを温めることも大事です。おしゃれな人ほど、首やデコルテの開いたファッションをしていますが、スカーフやストールを持ち歩いて、寒い日や冷房冷えなどの対策に上手に使いましょう。首周りを温めると、唾液腺の働きが活発になり、消化吸収が改善し元気になります。唾液腺マッサージもおすすめです。

 

ほかにも、ひざ掛け、レッグウオーマー、腹巻きなども上手に使いましょう。冬だけでなく、夏の冷房対策としても常備しておきましょう。

冷え対策2 食事

冷え対策2 食事

冷え対策には、食事が大きくかかわっています。食事に気をつけることで、早く冷え改善効果が実感できます。

 

「冷えている人は、アイスクリームやスムージー、アイスコーヒーなどの冷たいものを減らしてみましょう。チョコレートやケーキなどのスイーツも同様です。精製した砂糖や人工甘味料は、ミネラルが含まれていないため、よくありません」(赤澤先生)

 

冷たいもの、甘いものの摂取量を減らすと、血流の質が変化し血流がよくなり、冷え改善効果が実感できます。血糖値が上がりすぎると、血管に障害をもたらし、冷え症になりやすいのです。血管が良い状態だと、老廃物も上手く排除され、細胞が活性化されて、お肌も綺麗になります。

 

また、化学調味料や食品添加物もできる限り、減らしましょう。インスタント食品には、大事な栄養素が含まれていない場合が多く、動脈硬化の原因として疑われているものもあります。

 

サラダなどの生野菜やフルーツの食べすぎも体を冷やします。ナス、キュウリ、トマトなどの夏野菜は、体を冷やす食材です。

根菜類(大根、ごぼう、人参など)、セロリ、生姜、にんにく、ニラなどは体を温める食材です。お豆腐を食べるときは、冷ややっこより、昆布だしの湯豆腐やお味噌汁の豆腐にするなどの工夫で、温かい食べ物を多く摂るようにしましょう。

 

冷えてむくみやすい人は、カリウムの多い食材を摂りましょう。カリウムには、塩分(ナトリウム)を尿で排出する働きがあります。代表的なのは、バナナやリンゴ、メロンなどです。ただし、腎機能が低下している方は、カリウムを含む食材は控えることが重要なため主治医に相談してください」

冷え対策3 ウォーキング・エクササイズ

運動は、血流を上げて冷え改善のほか、多くの病気を予防してくれます。動かずにジッとしていると、血流は悪くなり、冷えて脂肪を燃やせない、筋肉のポンプが働かない、ますます体は冷えていき、脂肪がつきやすい体になってしまいます。

例えば、1分間に70回の心拍数があると成人平均の1回拍出量が70mlと言われています。70ml×70回の心拍数で4900mlとなり、約5リットルの血液が体を循環します。運動は血流アップには必須であると言えるでしょう。

 

 呼吸は、血流のためにも大切なので、有酸素運動が良いと思います。血流をあげて循環をよくするためには、早歩きで心拍数が少し上がる程度のウオーキングが効果的です。ランニングも良いですが、走りすぎると酸化ストレスが増えるので、老けやすいと言われています。自分にちょうどいい強度の運動をしましょう」(赤澤先生)

 

1日30分を目安に歩きましょう。WHO(世界保健機構)の指針では、1日10分のウォーキングを3回に分けて行っても、30分連続して歩くのと効果は同じとされています。

 

骨盤を動かしてほしいので、しこふみスクワットもおすすめです。そけい部がつまりやすい部分なので滞りを改善させるために、しこふみが大切です。また、脚には大きな筋肉があり、筋肉ポンプになるふくらはぎもあります。下半身を鍛えることは、血流アップ、冷え改善に役立ちます。ひざを曲げるのが難しい方やスクワットができない方は、座ってかかとの上げ下げをすることから始めましょう」

●【しこふみスクワット】

●【しこふみスクワット】

参考資料/『血流美人』赤澤純代著(ワニブックス)

 

 

①足を左右に大きく開きひざを曲げます。お尻は後ろに突き出さないように注意して、上半身はできるだけまっすぐ起こしておきます。

②この姿勢で、ひざの角度を90度くらいまで曲げて、腰を落とします。ゆっくり元に戻ります。これを5~10回、5セットを目安に行います。

 

忙しくて運動する時間がない、という人は、お風呂上がりのストレッチや通勤の往復にひと駅歩く、昼休みのランチは少し離れた店に行く、エレベーターやエスカレーターは使わず階段にすることでも冷え対策になります。

●冷え対策4 マッサージ

マッサージは、手っ取り早く血流をよくするために、有効です。セルフマッサージは、長時間行う必要はありません。体が温まったお風呂上りに5分でも良いので、継続的に行いましょう。寝る前にベッドで行うなど、マッサージのタイミングを決めてルーティンにできると良いですね。

 

マッサージができないときには、冷たくなっている部分をさするだけでも、皮膚刺激で血流アップに効果があります。末梢になればなるほど、筋肉がないので滞ります。爪の両側をもむのも、おすすめです。

 

セルフマッサージは、ふくらはぎのマッサージから始めてはどうでしょう。時間があるときは、手足の指先から心臓に向かって、全身の皮膚をさするとより効果的です。滑りやすくするために、マッサージオイルを使ってマッサージしましょう。

●【ふくらはぎのマッサージ】

●【ふくらはぎのマッサージ】

参考資料/『血流美人』赤澤純代著(ワニブックス)

①両手でふくらはぎを包むように、やさしくさすりあげ、ひざ裏のリンパ節に向かって流します。
ひざ裏のリンパ節は、むくみ改善のポイントになります。

②両手で少し力を入れて足首をにぎります。両方の親指で骨の内側をひざ裏にかけてマッサージしていきます。

●【足のツボ押し】

●【足のツボ押し】

参考資料/『血流美人』(ワニブックス)赤澤純代著より

 

 

血海(けっかい)は血流の流れが悪い体質の瘀血(おけつ)の人におすすめのツボです。マッサージをする流れで押してみてください。血流の改善に効果的です。自律神経も整いやすくなります。

 

足三里(あしさんり)のツボは胃腸の調整、消化吸収、排泄を整える作用があります。血液の質を高めることに働いてくれます。

 

三陰交(さんいんこう)は血の巡りを良くするツボです。特に生理、妊娠、出産、更年期などで滞りやすい骨盤の血流を改善させるためにも重要なツボです。

●冷え対策5 漢方薬 

「漢方薬は、女性の不調対策の味方です。未病の段階で、体調を改善して病気になるのを防いでくれます。冷え症は、西洋医学では治療対象になりませんが、女性の冷え症改善は、漢方薬の得意分野です。セルフケアだけでは改善しない冷えには、漢方薬を上手に取り入れてください。よく処方する漢方薬を紹介します」(赤澤先生)

 

●「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」:むくみがなく冷えている人に、体を温めて、冷えによる痛みを軽減する作用があります。

●「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」:冷えてむくみのある人に処方します。

●「大建中湯(だいけんちゅうとう)」:おなかが冷えている人に。

●「人参湯(にんじんとう)」:おなかの上のほうが冷えている人に。

●「五苓散(ごれいさん)」:水が滞って、頭痛やむくみ、冷えがある人に。

●「葛根湯(かっこんとう)」:冷えて、肩こり、乳腺炎などがある人に。 

●「六君子湯(りっくんしとう)」:胃腸の機能低下や食欲不振などからの冷えに。

 

 その人の体質や冷えのタイプによって、合う漢方薬が違いますので、最初は医師の診察を受けて、自分に合った漢方薬を処方してもらいましょう。

 

 

「冷えは、骨盤内の血流も低下させて、将来の妊娠出産、生理痛、子宮内膜症、片頭痛など、女性に多い病気とも関係しています。女性の人生のライフステージは、思春期、性成熟期、更年期から老年期まで繋げて考えることが大切です。人生をつなげて考えて、いま何をするかを選択していく、ライフコースアプローチの視点でも、冷えや血流を改善することは正常な細胞の代謝を維持し臓器の機能の改善に繋げるために重要です。生活習慣や食事、運動で血流をアップして、血流美人になりましょう」(赤澤先生)

イラスト/佐藤 尚美

 Instagram:@naomisatoh_design

赤澤純代 先生中込彰子先生

お話を伺ったのは…赤澤純代先生

金沢医科大学総合内科学教授

あかざわすみよ●金沢医科大学女性総合医療センターセンター長。1992年金沢医科大学卒業。東京大学第3内科、金沢医科大学循環器内科を経て現職。専門は、女性医療、漢方、高血圧、抗加齢など。血流、血管の中でも特に微小循環に着目、未病の段階から改善する予防医療を実践。著書に『血流美人~温め流し、排出する この3段階で若返る!』、『血管の強化書』(ともにワニブックス)。

対馬ルリ子先生

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。数多くの雑誌、WEBマガジンで連載。乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。

著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。

詳細は増田美加オフィシャルサイト参照。


#タグ一覧から記事を探す

ビューティアポセカリーとは?

カフェやスパ、医療機関の揃う伊勢丹新宿店本館地下2階にショップを構えるビューティ&ヘルスケアのトータルショップ。

“今”も“これからも”美しく健康でありたいと願うお客さまのかかりつけショップでありたい。その想いから、お客さまそれぞれの「ありたい自分」を叶えるアイテムを、コスメ、フレグランス、フード、インナーサポートなど幅広く取りそろえてご紹介しています。

ナチュラルコスメ&オーガニックコスメのビューティアポセカリー

「なりたい自分になる!」を叶えるビューティー情報メディア meeco magazine

関連コラム

生理痛、PMS(月経前症候群)を和らげる方法を専門医が指南!~快適な毎日を送るための工夫~

2024.1.17

生理痛、PMS(月経前症候群)を和らげる方法を専門医が指南!~快適な毎日を送るための工夫~【知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方】vol. 2

更年期を元気に乗り越えるコツ ~未来の私をもっと好きになるために~【知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方】 vol.1

2023.12.29

更年期を元気に乗り越えるコツ ~未来の私をもっと好きになるために~【知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方】 vol.1

ビューティアポセカリースタッフがやって良かった、やってみたい美容座談会

2023.8.23

ビューティアポセカリースタッフがやって良かった、やってみたい美容座談会

この記事をシェアする

ISETAN BEAUTY online のコスメサイト

  • ポイント

    エムアイポイントのプレゼントキャンペーンを随時開催

  • ギフトラッピング無料

    お届け先を指定する際にギフトラッピングを承っております。

  • 送料無料 /最短当日発送

    1会計税込2,750円以上のご購入で送料無料。午前10時59分までのご注文で最短当日発送。