【医師監修】将来、妊娠・出産できる心と体でいるために、今知っておくべき“プレコン”(プレコンセプションケア)って何?
【知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方】 vol.5

2024.4.17

コラム

シリーズ連載「知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方」はあなたの心と体に寄り添って、より自分らしく快適に生きるためのコツを専門の医師からアドバイスしていただくシリーズ。伊勢丹新宿店地下2階にある美と健康のショップ「ビューティアポセカリー」でお悩みの多いカテゴリーをピックアップし、自分をもっと好きになるために、今できるケアの情報をお伝えしていきます。

 

5回目のテーマは、プレコン。健康で望むときに妊娠・出産できる心と体でいるために、プレコン(プレコンセプションケア)が重要と言われています。プレコンは、まさに妊活から一歩進んだ考え方! 将来のライフプランを考えて、毎日の生活や健康と向き合うために、知っておきたいプレコンとは?女性医療が専門の内科医の荒田尚子先生に伺いました。

 

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

【医師監修】将来、妊娠・出産できる心と体でいるために、今知っておくべき“プレコン”(プレコンセプションケア)って何? 【知る・わかる・ラクになる ドクターに訊く 私たちの困ったカラダのつき合い方】 vol. 5

【目次】

◆プレコンケア(プレコンセプションケア)は、妊娠可能な年齢の男女にとって大切

◆プレコンが必要な日本女性の現状とは?
◆生理痛(月経痛)改善、やせと肥満、葉酸サプリの摂取は大切
◆プレコンのための検診は?

◆プレコンケア(プレコンセプションケア)は、妊娠可能な年齢の男女にとって大切

コンセプション(Conception)とは、受胎、つまりおなかの中に新しい命を授かること。プレコンセプションケア(プレコン)は、若い男女が将来のライフプランを考えて、日々の生活や健康と向き合うことで、将来の健やかな妊娠・出産につながり、未来を担う子どもの健康の可能性を広げるとして、“妊活”から一歩進んだヘルスケアの考え方として、近年注目されています。

 

「プレコンセプションケアは、結婚や妊娠を考えている男女だけでなく、すべての妊娠可能な年齢の女性にとっても男性にとっても大切なケアです。自分自身のヘルスリテラシーを磨いて、健康な生活習慣を身につけること、それは単に健康を維持するだけではなく、より自分らしい人生を送ることにつながると思います。

 

私たちの体は毎日、一生懸命に働いています。だから、体や心の悩みがあるのは当然です。そんな悩みを勉強や仕事に持ち込まずに、パフォーマンスを上げていくためには、しっかりしたメンテナンス=ケアが必要ですね」と荒田尚子先生。

◆プレコンが必要な日本女性の現状とは?

●【冷えチェック】

なぜ今、日本でプレコンセプションケアが必要とされるようになったのでしょうか?

 

妊娠前からもっている女性の体のリスクが妊娠・出産、さらに赤ちゃんの健康にも影響することがわかってきたのです*1

たとえば、5.7%の赤ちゃんが早産で生まれ、9.4%は低出生体重(2500g未満)で生まれ、周産期の死亡(満22週~生後1週未満の赤ちゃんの死亡)の34.6%が、母体の病態による影響、あるいは母体の妊娠合併症による影響が原因とされています。また、2~3%は先天異常をもって生まれているという厳しい現状があります」(荒田先生)

 

*1 母子保健の主なる統計平成30年度発行 2018:ICBDSR 日本支部 2018

 

ほかにも、下記のような将来の妊娠、出産に影響する問題や生まれてくる赤ちゃんにかかわる女性の健康問題が指摘されています。

 

若い女性のやせ (若い女性の低栄養や低活動性によるやせが若い女性の約2割と増加。これは、低体重児の赤ちゃんの増加や将来に起こりうる赤ちゃんの健康問題と関連)

 

若い女性の肥満 (約1割の若い女性が肥満で、妊娠合併症の増加や、女性や赤ちゃんの将来の肥満に関係する病気に影響)

 

□妊娠前、妊娠中、産後の女性の喫煙率の高さ

 

□妊娠前、妊娠中、産後のアルコール飲酒率の高さ

 

葉酸の摂取率の低さ(適切にサプリを摂取している人は8.3%に過ぎない)

 

ワクチン接種率(特に HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン、風疹ワクチン)の低さ

 

□女性のがん検診受診率の低さ

 

女性の生理(生理痛、PMS、生理不順ほか)に関連する健康問題

 

□女性の健康は、女性自身で守るという意識の低さ(特に避妊や性感染症に対して)

 

□妊娠前から医学的に問題となる状態(糖尿病、甲状腺機能異常、高血圧症など)

 

□催奇形性のある感染症や薬剤の使用

【プレコンに関係する日本女性の現状】

【プレコンに関係する日本女性の現状】

※図は以下のデータ参照

20代のやせ・20代の肥満:国民健康・栄養調査 2015年-2019年

適切な葉酸サプリメント摂取:環境省エコチル調査 2011年-2014年

20代、30代の女性の喫煙率:国民健康・栄養調査 2018年

◆生理痛(月経痛)改善、やせと肥満、葉酸サプリの摂取は大切

特に、こんな症状や不調があったら、改善しておいたほうがいいという注意事項や、将来妊娠・出産に影響するリスクには、どのようなものがあるのでしょう?

 

「生理(月経)に関連する不調の問題は、現代の日本女性にとって大きいと思います。生理痛やPMSをつらいのに我慢している人がとても多いのです。つらい月経困難症から、子宮内膜症になったりすると、将来の不妊の原因にもなってきます。つらい生理痛は、当たり前の時代ではありません。我慢しないで治療してほしいです。婦人科のマイドクターを作っておいて何かあれば相談することが大切です。

 

また、やせの人と肥満の人も増えています。不妊治療している方がせっかく妊娠したのに、肥満で血糖値や血圧値が高く、「妊娠糖尿病」や「妊娠高血圧症候群」になってしまった人もいます。

母体や生まれてくる赤ちゃんにも影響しますので、不妊治療を始める前に生活習慣病は、しっかりチェックして対策をしておくことが重要です。国の特定健診は40歳にならないと始まらないので、自分でチェックしておくことは大切です」(荒田先生)

 

それから日本女性は、葉酸サプリメントの摂取率が低いことも大きな問題です。葉酸は、水溶性のビタミンB群の一種で、細胞の増殖や成長のために不可欠なビタミンと言われていますが、食品だけでは足りません。

 

妊娠初期は、脳・神経管(胎児の脳と脊髄、中枢神経系にとても重要な器官)・心臓など、赤ちゃんの体の重要な部分が形成される大切な時期です。この時期に葉酸が不足すると、これらがうまく形成されずに、赤ちゃんの神経管閉鎖障害という先天異常の可能性が高くなると言われています。

 

「アメリカでは、葉酸サプリメントを積極的に飲んでいますし、海外では政策として、小麦や塩に葉酸を混ぜている国もあります。

妊娠前からの積極的な葉酸の摂取は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減する効果があります。食品から葉酸を摂取することに加えて、サプリメントから1日0.4mgの葉酸を摂取すれば、神経管閉鎖障害の発症リスクが低減することが期待できると2000年に厚生省からの通達も出ています」と荒田先生。

 

もちろん、煙草は絶対にNG。アルコールは適度ならいいですが、一定量以上の飲酒習慣はよくありません。日本人はアルコール分解酵素が足りないので、女性は1日20グラム(ワイングラス2杯目安)を超えたら危ないと思ってください。妊娠の可能性があるときは、避けましょう。

◆プレコンのための検診は?

これから妊娠・出産を考える世代の女性は、プレコンセプションケアとして、どんな検診をどんな間隔で、受ければいいでしょうか?

 

20歳から2年に1回の婦人科検診(子宮頸がん検診を含む)は必ず受けてほしいです。そのためには、婦人科のマイドクターを持ちましょう。

それから、乳がん検診は40歳からなので、20代30代の女性は、自分の乳房に関心をもって、普段から乳房をチェックしておく“ブレスト・アウェアネス”も行ってください。

年1回の自治体や職場健診も忘れずに。血圧、血糖はチェックしましょう。甲状腺疾患の家族歴があれば、甲状腺の血液検査もやってください。

それから、年1回の歯科検診も大切です。お口は、体の入り口です。歯が悪い人は、炎症がずっと続いて、不育症や流産の原因にもなることがあります」(荒田先生)

 

プレコンセプションケアは、将来の妊娠・出産を考えるときだけでなく、自分の健康のため、人生のために、だれもが今すぐにでも始めたほうがいいことだとわかります。年代ごとに起こりやすい病気はあり、ライフプランを考えるうえでも病気のリスクを低くする「ライフコースアプローチ」のヘルスケア視点をもつことは大切です。

 

「プレコンもそのひとつです。遺伝的な素因や、生まれてから乳幼児期までの環境などを考慮するため、その内容は一人ひとり異なります。年齢を重ねるごとに、生活習慣病やがんなどのリスクは高まり、男女でも違った特徴が見られます。それらを知ったうえで、将来の自分のライフプランをデザインしてください。そのために役立てていただきたい、プレコンチェックを最後にご紹介します」(荒田先生)

【ライフコースアプローチの視点からみたヘルスケアで気をつけること】

【ライフコースアプローチの視点からみたヘルスケアで気をつけること】

【プレコン・チェックシート(女性用)】

できることから取り組み始めて、1つずつチェック項目を増やしていきましょう。

【プレコン・チェックシート(女性用)】
【プレコン・チェックシート(女性用)】

引用/国立成育医療センター「プレコン・チェックシート」より2023年12月改訂

【プレコン・チェックシート(男性用)】

男性にもプレコンセプションケアは必要です。妊娠は女性だけの問題ではありません。男性も健康維持に努めて、赤ちゃんのできやすい体質になりましょう。

【プレコン・チェックシート(男性用)】

引用/国立成育医療センター「プレコン・チェックシート」より2023年12月改訂

イラスト/佐藤 尚美

 Instagram:@naomisatoh_design

赤澤純代 先生中込彰子先生

お話を伺ったのは…荒田尚子先生(国立成育医療センター)

国立研究開発法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター母性内科診療部長

あらたなおこ●「保健・医療・教育機関・産業等における女性の健康支援のための研究」令和2~4年度 厚生労働科学研究費補助金(女性の健康の包括的支援政策研究事業)研究代表者。次世代を担う健全な子どもの出生と成長も考慮した“女性医療”を内科の立場から提供している。専門は妊娠に関連した糖代謝障害や内分泌疾患。

対馬ルリ子先生

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。数多くの雑誌、WEBマガジンで連載。乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。

著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。

詳細は増田美加オフィシャルサイト参照。

ビューティアポセカリーとは?

カフェやスパ、医療機関の揃う伊勢丹新宿店本館地下2階にショップを構えるビューティ&ヘルスケアのトータルショップ。

“今”も“これからも”美しく健康でありたいと願うお客さまのかかりつけショップでありたい。その想いから、お客さまそれぞれの「ありたい自分」を叶えるアイテムを、コスメ、フレグランス、フード、インナーサポートなど幅広く取りそろえてご紹介しています。

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